幼児教育を語るひろば

幼児教育を語るひろば

アベロンの野生児

昨日は、「社会的に隔離された状態で育つと、どうなるか?」 について書きました。
そこで社会性の欠如が、人間の完成に大きな障害となった事例を紹介します。

1799年 南フランス・ラコーヌの森で、木の実や草の根を食べて裸で生活していた
11~12歳くらいの少年が、ハンターたちに保護されました。
(いわゆる アベロンの野生児 です)

この少年は幼児期に親に捨てられ、その時から人との接触も無く森の中を放浪して
いたようです。もちろん言葉も話せず、人間社会の習慣も全く身につけていません。

発見された時の彼は多動で注意力散漫、極めて動物的でした。身体的な諸機能も、
すっかり低下していました。特に感覚器官が、劣っていたようです。

フランスの医師で障害児教育の先駆者でもあるジャン・イタールが、この野生児を
(ヴィクトールと命名)引き取って、人間社会への適応教育を担うことになりました。

イタールは5年間 ヴィクトールの世話をしましたが、成果はなかなか上がらず、
言語機能はとうとう回復しなかったようです。


イタールは 「アベロンの野生児」というレポート 1890年・古武弥正訳)の中で、
野生児の教育に当たって次のような条件をあげています。

1、彼が今行っている生活よりももっと楽しく、さらに彼が過去へ捨ててきた生活に
 近い生活を与えることによって、社会生活に興味を持たせること。

2、非常に力強い刺激や、時には激しい感動によって彼の神経的感覚力を目覚ま
 させること。

3、彼に新たな要求を与え、社会的な接触を増すことによって、彼の観念の範囲を
 広げること。

4、必要という重大な法則によって模倣の訓練をつけ、言葉を使うように彼を導くこと。

5、しばらくの間、肉体的要求の対象に対して、簡単な心理的処置ができるように
 彼を導き、その後、そうした心的過程を教育の目的へとあてはめてゆくこと。



この中で特に注目すべき点は、社会生活に興味を持たせること・社会的な接触を
増すことです。「人間は社会的動物である」と、言われます。未成熟者が成熟者に
なるということは、社会性を身に付けることなのです。

「アベロンの野生児」から学ぶことは、人間は自然のままに放置しておくと、人間と
しての完成は不可能ということです。つまり社会性の欠如が、人間の完成に大きな
障害になるということです。

どんなにすぐれた素質があっても、人間は社会の中で他の人と交わることによって、
その素質の花が開くということを、「アベロンの野生児」が教えてくれています。


 *参考文献 ・・・ 「教育原理」 (野辺忠郎編 学苑社発行)

コメント

興味深い内容でした

  • 2011/07/09(土) 23:37:30 |
  • URL |
  • #-
  • [ 編集 ]

興味を持って頂き幸いです

  • 2011/07/10(日) 09:39:23 |
  • URL |
  • 元園長 #-
  • [ 編集 ]

現在中3で
夏休みの宿題に役立ちました。

  • 2011/08/04(木) 12:06:00 |
  • URL |
  • #-
  • [ 編集 ]

役に立って何よりです 夏休み有効に使ってください

  • 2011/08/04(木) 17:23:27 |
  • URL |
  • 元園長から #-
  • [ 編集 ]

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://freesia7.blog10.fc2.com/tb.php/763-bf3b0c2b