幼児教育を語るひろば

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ちょっとお花見

国木田独歩の「武蔵野」に、こんなくだりがあります。

「自分は或友と市中の寓居を出でて三崎町の停車場から境まで乗り、其処で下りて北へ真直ぐに四五町ゆくと桜橋という小さな橋がある。それを渡ると一軒の掛茶屋がある、この茶屋の婆さんが自分に向て、「今時分、何にしに来ただァ」と問うた事があった。」

「茶屋の横を流れる幅一尺ばかりの小さな溝で顔を洗いなどして、其処を立出でた。この溝の水は多分、小金井の水道から引いたものらしく、能く澄でいて、青草の間を、さも心地よさそうに流れて、おりおりこぼこぼと鳴ては小鳥が来て翼をひたし、喉を湿すのを待ているらしい。しかし婆さんは何とも想わないでこの水で朝夕、鍋釜を洗うようであった。」

「茶屋を出て、自分等は、そろそろ小金井の堤を、水上の方へのぼり初めた。ああその日の散歩がどんなに楽しかったろう。成程小金井は桜の名所、それで夏の盛にその堤をのこのこ歩くも余所目には愚かに見えるだろう、しかしそれは未だ今の武蔵野の夏の日の光を知らぬ人の話である。」



私は独歩が書いた「桜橋」付近の小学校・幼稚園に、併せて10年勤めていました。独歩の「武蔵野」を読みながら、この辺りをよく散策したものです。幼稚園の近くには、通称「独歩の森」という武蔵野の面影を残した雑木林がありました。

私は子どもたちを、「独歩の森」へよく連れて行きました。小学生や幼稚園児には難しかったでしょうが、独歩の「武蔵野」を紹介し解説しました。少しでも自分たちが住む武蔵野市が、好きになってくれればという願いからでした。

独歩は、桜の季節より夏の武蔵野を好んだようです。この辺りは「桜堤」という地名もあるくらいで、江戸時代からの桜の名所です。玉川上水沿いに、現在の武蔵野市から小金井市にかけて桜並木が続いていました。

この2~3日の暖かさで、桜が一斉にほころび始めました。久しぶりにJR武蔵境駅(旧境駅)から独歩を真似て、桜橋・桜堤・小金井堤と歩いてみました。

茶屋の辺りは、現在浄水場になっています。道路もすっかり舗装されて、マンションが林立しています。独歩が愛した武蔵野の面影は、もうありません。

玉川上水沿いには、桜並木がまだ残っています。最近植えられたような、若木が目立ちます。きっと地元の方々が、一生懸命桜並木を保護しているのだと思います。

ただ古い桜は自動車の排気ガスに痛めつけられているせいか、幹が黒ずんでいて枝ぶりも貧弱です。それでもけなげに、美しい花を咲かせていました。

独歩は、「武蔵野の美は、路を当てもなくただ歩くことによって獲られる。」と言います。今は昔でしょうか・・・・

急に思いついたお花見でしたが、心がウキウキしました。「生きている!」と感じますから、桜の花は不思議な力を持っています。

桜を愛でながら散策してみると、他にも色々な花が咲いているのに気づきました。つくづく四季折々、自然に恵まれた日本に暮す喜びを感じました。


コメント

玉川上水沿いに並ぶ桜は見事ですね。今朝は、その満開の桜から鶯の見事な鳴き声がすぐ近くに聞こえ、幸せな気分でした。
まだつぼみの桜の木は山桜で、もう少しあとから楽しめるようですから、またお出かけになると良いかもしれませんね。

  • 2008/03/28(金) 22:42:41 |
  • URL |
  • 東京娘 #-
  • [ 編集 ]

東京娘さんへ

桜に鶯もいいですね 遅い桜があるなと思って見てきましたが 「ヤマザクラ」ですか 2度楽しめますね ありがとうございました

  • 2008/03/29(土) 20:15:05 |
  • URL |
  • 元園長 #-
  • [ 編集 ]

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