幼児教育を語るひろば

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やさしい心を育てる

アニミズム(animisum)という言葉があります。元々は哲学用語です。精霊崇拝のことで、宗教の原始形態の一つとされ、すべての事物に、霊魂や精神が存在すると信じる心的状態を言います。

転じて、幼児教育では「アニミズム的な考え方」と言って、幼児が、身近で大事にしているオモチャやぬいぐるみ、ボールや三輪車などには、人間と同じように、命や感情があると信じている様子を指します。身近にある動物や植物についても、同じように考えています。擬人化された絵本の主人公のお話しに、夢中になるのもそのためです。

幼稚園在職中、園児たちのこのような考え方を目にすることが、しばしばありました。

園庭でサッカーをしていた年長の男児が、終わったら、サッカーボールをなでながら、「ごめんね、痛かった?」と話しかけていました。

朝、門の前で園児たちを迎えていた時、年少の女児が、泣きながらタンポポの花を私に手渡しました。「どうしたの?」と訊ねると、「茎が折れて可哀そう。」と言うのです。

しおれかかった草花を見れば、「のどが渇いたのね。」と言って、水をかけてあげます。茎の折れた花を見れば、自分が骨折したような騒ぎをして、ビニルテープで包帯をします。生き物だけではなく、石ころを蹴っても、石ころが痛がると思っています。

このアニミズム的な考え方は、成長過程の未発達段階における、大事な思考形態だと言われます。人はこの頃に、他人を思いやり、他人の痛みを感じ取るという、とても大切な心情が芽生えるのです。

これを、大人が「花は痛みなど感じない。」とか、「物と人は違う。」とか言って強く否定すると、子どもの情緒の発達は乱されます。かえって、生き物をいじめたり、物を壊したりするような、攻撃的な心情が強まります。

それよりは、子どものアニミズム的な考え方に共感して、子どもの心情を、肯定的に受け止めてあげましょう。そして、一緒にアニミズムの世界に入り込むのです。我が子の考えがよく理解できるだけでなく、やさしい心を育てるのにも役立ちます。さらにはやさしい心の芽を、人を愛する心に育てることも出来るのです。

やさしい心は、やがて人を愛する心に成長します。

親が子を殺し、子が親を殺す。夫が妻を殺し、妻が夫を殺す。そんな異常な事件が、連日のように報じられます。どこで、何が狂ってしまったのでしょうか?

私は、幼児期におけるアニミズム的な考え方を、大事にしなかったツケが、今になって返って来たのだと思っています。やさしい心、真に人を愛する心を、育てて来なかった報いだと思っています。


 

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