幼児教育を語るひろば

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二重人格?

あるお母さんの相談をヒントに、私見をまとめてみました。

園長時代に、こんな質問をよく受けました。「家では良い子なのに、園では先生の
言うことを聞かない・決まりを守らない・乱暴する ・・・・  どうしてでしょうか?」 
中には、「先生の指導が悪いから・友だちが悪いから ・・・・」 という批判もありま
した。また逆に、「家では悪くて困っているのに、幼稚園では良い子と言われる。」
というのもありました。

お母さん方は、「二重人格者ではないか?」 また 「将来二重人格者になってし
まうのでは?」 という心配があるのです。

そこで、「家では良い子、園では悪い子。」をサンプルに考えてみます。一般的に
は、「家庭生活の反動が、幼稚園生活で現れる。」ということです。ではどういう
場合に、その反動が現われるのでしょうか?

一番多いのが、家庭における母子関係の有りようです。私はお母さん方の相談
を通して、お母さんのタイプを次の3つに分類しました。以下それぞれのタイプに
ついて、子どもがどうなるかを考察してみます。

  1、支配型   2、溺愛型   3、放任型


支配型
どちらかというと、満点主義のお母さんの場合です。 こういう子どもに育てたいと
いう願望が強すぎて、子どもを支配する傾向が見られます。

幼稚園児はちょうど第一反抗期で、 母親の支配からは逃れようとする時期です。
しかも反抗的な態度は、年少から年長へと進むにつれて、いっそう激しくなります。 
それが、普通です。

ところがこのタイプのお母さんは、子どもが反抗すればするほど支配的態度を崩そ
うとしません。かえって、厳しく支配するようになります。 子どもも、反抗の糸口が
掴めません。

家では反抗しても得るものが無いので、仕方なく家での反抗を諦めます。 子どもに
してみれば本当は、反抗を通して自分の主張を認めてもらいたいのです。家で発散
出来ない反抗心が、幼稚園で爆発するのはあり得ることなのです。

このタイプのお母さんは、幼稚園でも「挨拶」・「言葉遣い」・「読み書き」・「計算」等を
しっかり指導して欲しいと要求します。 本当はお母さんの支配を解いてあげる方が
先決なのですが、なかなか分かってもらえません。

溺愛型
過保護型と言っても、よいと思います。家では子どもの欲求が、全て叶えられます。
このタイプのお母さんは、なんでも子どもにさせるのは まだ無理・可愛そうだという
気持ちが、強いのが特徴です。ですから、つい子どもの先回りをして、口や手を出し
てしまいます。

子どももその方が楽なので、家では全て親任せで済ませます。一見とても安定して
いるように、見受けられます。ところが幼稚園では、そうは行きません。自分でやら
なければならないことも、一杯あります。 友だちと協力しなければならないことも、
一杯です。家でのようには、思うようになりません。

家では拒否されることが無いのに、園ではしばしば拒否されたり 否定されたりしま
す。家なら安定していられたのに、幼稚園ではとても不安定な立場に立たされます。 
そのためパニックを起こして、攻撃的になってしまうのです。

いわゆる、「お母さん子」になってしまうのです。「お母さん子」は男児だと女児を排斥
し、女児だと男児を排斥する傾向が見られます。お母さんの愛情を、ひとり占めして
いるためと思われます。 思春期になっても、正常な「異性愛」に発展しない心配が
あります。

放任型
このタイプは忙しくて子どもにまで手が回らないという場合と、子育てが面倒・嫌いと
いう場合があります。後者は、放任型というより、拒否型と言った方がよいかも知れ
ません。 (意外と多いように思います)

どんな子どもも、母親を愛したい・愛されたい(甘えたい) という気持ちで一杯です。
然し親への愛情欲求が、満たされる環境ではありません。子どもは、常に一人ぼっ
ちです。孤独感だけが深まり、悲劇の主人公としての道を歩むようになります。

放任は子どもにとって、無視されているのと同じです。何をやっても認められるわけで
はないし、張り合いもありません。不満だけが、募ってきます。園で楽しそうな友だち
を見るだけで、腹が立ちます。その不満が鬱積して攻撃性に変わっても、不思議では
ありません。

放任型の場合は、乱暴が目立ちます。みんなに認めてもらうには、暴れるのが一番で
す。この場合園だけの乱暴で治まればよいのですが、放置しておくと 家庭内暴力や
無差別殺傷事件にまで発展する危険があります。

放任型にも、一つ救いがあります。子どもは何でも自分でやらなければなりませんか
ら、独立心が早くに育つと言うことです。


二重人格が心配される背景には、母子関係(時には父子関係)があるのです。
二重人格と思われる症状も、多様です。

お母さん方から相談を受けた長年の経験から、親が二重人格を育てていることを
知って欲しいと思ってまとめてみました。