幼児教育を語るひろば

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子どもの手

私は、公立幼稚園に園長として、7年間在職しました。その幼稚園は、4歳児を年少組、5歳児を年長組とする2年保育制でした。

そこでは子どもたちと、手をつなぐ機会がとても多かったのですが、それで気づいたことがあります。

4月当初、入園してきたばかりの年少児と手をつなぐと、握る力も大変弱く、手を自由に使いこなす器用さも殆んど見られず、ぎこちない様子です。

ところが、年長児と手をつなぐと、彼らは握る力がずいぶん強いのです。そして、自分の意志で手を動かし、使いこなし、器用に仕事も進めることが出来ます。

そこで、いつ頃から年少児たちが、自分の手を器用に使いこなすようになるのかと、気をつけて観察してみました。すると、意外に早く、年少の夏休みが過ぎた頃からだということが分かりました。幼稚園の環境にも馴れ、集団生活にも馴れ、保育活動についていけるようになる頃です。

それは、子どもたちの絵を見ても気づくことができます。入園当初の年少児の絵は、太さも濃さもまばらな線が、弱々しく無意味に重なり合いながら描かれています。

でも年長児の絵は、もっと複雑になってきます。表現されたものはアンバランスでも、2つ以上の事象が描かれるようになり、子どもたちの、絵に篭められた心情も、読み取ることができるようになります。

手の力がついてきたら、生活の中で、どんどんそれを使う活動が大事です。ただ、手の正しい使い方(操作・技術)については、大人が指導する必要があります。

例えば、靴や衣服の紐の結び方などは まず基本を教えてあげます。後は子どもたち自身に、繰り返し練習させればよいのです。子どもたちは、紐を何べんも結んだり解いたりしているうちに、しっかり結ぶコツを体得したり、小間結びなどを解いたり出来るようになります。

箸が使えないからスプーンで食事をさせるのではなく、箸を与えて、正しい持ち方、使い方に慣れさせます。スプーンはスプーンで、その正しい使い方やマナーを、身につけさせればよいのです。

鉛筆や筆の使い方もそうです。これらも、まず大人が基本をしっかりと子どもたちに教えることが大事です。

然し、子どもによっては、先天的に、箸や鉛筆の持ち方・使い方を、自己流でこなす場合があります。その方が力も入るし、使い易いようです。この場合は、無理に矯正する必要はありません。(特に左利きの場合に多い)

手を使うことは、子どもの大脳の発達を促すと言われます。