幼児教育を語るひろば

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殺人事件と少年非行 (2)

絶句して立ち往生する心

五木寛之は 著書「他力」の中で 1997年に起きた 神戸少年殺人事件に関連して 次のように書いています

「どうしてこんな世の中になったのでしょうか
 この50年間 私たちは経済成長第一でやってきて 経済的には損だけど カネより大切なものがあるということを みんな見失ってしまった 損と損の間にいろいろな
価値観があるということを忘れてしまったのです 価値の基準がすべてデジタルに
なったのだと思います」

「いま必要なのは 神戸の震災や酒鬼薔薇事件を前にして 理路整然と解説することではなく 絶句して立ち往生する その心です それが普通だし 大切なことです
 たとえば 子供が自殺した学校の校長や教頭が 「うちには責任がない」とか 「いじめの事実はない」と 明快にすらすら言うのはどこかおかしい 神戸で殺された子が通っていた小学校の女性校長は 絶句して涙をぽろぽろ流していた あれが普通です
 そういう反応を前近代的 情緒的だとして排除してきたのが 戦後の歴史なのです」 


少年非行

平成17年度の「犯罪白書」では 少年非行について特集しています その中に
少年非行の動向と 対応策に関する記述がありますので 紹介します

少年非行の動向

平成16年度に 少年刑法犯で検挙された少年は(10歳異常20歳未満)
19万3076人です(前年比5,2パーセント減) 少子化の影響もあって 検挙人員は このところ20万人前後で推移していたのと比べると 減少しています しかし 検挙人員の人口比は(少年人口10万人当たりの検挙人員の比率) 少年非行のピーク時だった昭和50年代後半ころに次いで 高い水準にありますす

罪名は男女共各年齢層において 窃盗が最も多く 次は横領です この二つで男子の8割 女子の9割を占めています 殺人は 近年おおむね100人前後で推移し
16年は62人(前年比35,4パーセント減)でした
 強盗は 平成8年度以降1000人を超え 15年には1800人とピークに達し 16年は1301人(前年比27,7パーセント減)で 相変わらず高い水準です

少年非行への対応

犯罪白書で参考になるのは 少年院教官による調査結果と 非行少年処遇上の
留意点です 次の3点が挙げられていました

1、人の痛みに対する共感性を育てる処遇

多くの教官が 処遇において 最も困難になったと感じていたのは 「人に対する理解力・想像力に欠ける」 「自分の感情をうまくコントロールできない」といった 非行少年の感情・情緒に関連する 資質面の問題だそうです

そのため 基本的な生活の安定や考える力を養う訓練を 積み重ねた上で 人に対する信頼感や思いやり等の 暖かい心を回復させる また自分たちの非行や これに関連する自らの体験・感情等を 見つめ直させる そして 加害者として 人に与えてきた痛みについて考えさせ これらに重点を置いて指導に当たる と言っています 
私も 共感性を育てる指導には 賛成します

2、集団場面を活用した処遇

少年院教官による 非行少年たちの交友関係調査では 「対人関係を円滑に結ぶスキルが 身についていない」 「周りの誘いを 断れない」 「心から信頼しあえる関係を 持てない」 などの問題が指摘されています そこで 少年同士が 共通の目標に向って 集団的に行動する中で 互いに価値観・感情をぶつけ合いながら 切磋琢磨し 背長していくことが重視されるというわけです

確かに 多様な関わり合いを持たせることは 大事です ただ 集団の力が強くなると 自分の気持ちを正直に出せない少年も 出てくるのではないかという心配があります 集団教育の欠点は 規格品を作り出すということです 個性豊かな人間づくりが否定されないように 注意しなければなりません

3、保護者の自発的対応を促す働きかけ

少年院教官の調査でも 「子供の行動に対する責任感がない」 「子供の言いなりになっている」 「子供の行動に無関心である」 と指摘しています これは他の調査結果と あまり変わりません そして父親と母親では 多くの点で認識のずれがあります

非行少年の更生のために 保護者の対応を促す必要は 勿論あります でも 親に問題があるため 非行に走るケースをずいぶん見てきました 両親の認識の一致を図る前に 子どもを受容し 子どもを柔らかく包み込むことが出来る親に ぜひなって欲しいと心から願っています